ドルオタちょあよ

ドルオタ美大生のちょあちょあ日記

ジェンダーに斬りこんだミステリー漫画『幽麗塔』の感想

 

お久しぶりです〜!

最近ブログを更新できてなくてすみません!

 

そういや私、最近漫画を買ったんですけど

 

 (画像をクリックするとAmazonにとびます!)

めちゃくちゃいい

 

今回は漫画『幽麗塔』の感想です!

⚠️ネタバレも含まれるので注意⚠️

 

あらすじ

時は昭和 29年、舞台は神戸。

 

ニート天野は幽霊塔と呼ばれる時計塔で、白い何者かに襲われ死の寸前、謎の美青年・テツオに救われる。

 

テツオ曰く「幽霊塔の財宝探しを手伝えば、金も名誉も手に入る」

 

しかしテツオの正体は男を装う女であり、その名も偽名であった…

 

…という話です!

タイトルからも分かる通り黒岩涙香の「幽霊塔」をモチーフにしています。

 

この作品の面白いところはぱっと見、耽美文学風ミステリーに見せかけて、実はジェンダーがメインテーマであることです。

 

「幽麗塔」はセンスオブジェンダーを受賞しています。

2014年度 第14回Sense of Gender賞 The 14th Sense of Gender Award in 2014|ジェンダーSF研究会

  

テツオがカッコよすぎる 

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主人公・天野とペアを組んで、幽霊塔のナゾを探っていくメインキャラの一人。

 

このストーリーの一番の魅力はテツオと言っても過言ではないです!

  

あらすじの通りめちゃくちゃ美人という設定ですが

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こういう顔もするw

乗ってるチャリ、借りパクしたやつなのに…しかもこのとき、ワケあって二人とも指名手配されているんですよ。余裕すぎ!

 

見た目こそ美しいですが結構肝が据わっていて、破天荒なところもあるのがテツオという男。

 

また、テツオの魅力は見た目と性格だけではありません。

 

テツオは身体は女、心は男の性同一性障害なんですね。

彼の美しさに惹かれる人々、そしてテツオ自身のジェンダーへのコンプレックスがこのストーリーのカギとなってきます。

  

容姿端麗、頭脳明晰、そしてときには大胆不敵…

これはあくまで漫画なので、セクシャルマイノリティーを美しく飾り立てすぎ感は確かにある。

私は創作物にリアリティよりもドラマティックかどうかに重点を置くので気になりませんが…

 

実際の性同一性障害はこんなに都合よくスタイルがよかったり、ガンガン戦えたりしないでしょうけど。

 

でもやっぱりセクシャルマイノリティーってすごく興味深い存在だから、創作意欲がわくんですよねぇ…

私も両性具有とか中性的なキャラって大好きですもん。

 

多少現実をおいてけぼりにしてでも創作したくなる神秘性。セクマイにはそんな魅力があるのかもしれません。

 

ファッションがジェンダーを決定づける?

テツオのファッションがバラエティ豊かでとても嬉しい!

美人は何を着てもサマになります。

 

8巻ではこんなセクシーなドレスを着ているんですが

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正直、手術着の方がエロいと思う

お尻プリプリやん… 

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他にもテツオはスーツやら学生服やら着物やら…女っぽい格好もさせられています。

コスチュームフェチズムを感じる…

 

創作の界隈では中性的なキャラってだいたい女装とかコスプレさせられますよね。フェチだよね。

 

中性的キャラの醍醐味って男性性と女性性を行き来できるところにあると思うので、テツオに女装も男装もさせたくなるのはわかります。

 

ちなみに主人公・天野は何と女装をさせられています。しかもストーリーの大半は女装して過ごしているという… 

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テツオ評はブスだけど…

 

天野の女装はストーリーにおいて重要

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「守られて、大切にされて、そうして子供産むのが幸せって気持ちも…今ならわかる気がしてね。」

女装をしてみて、女の気持ちを少しだけ理解する天野。

そんな天野に驚くテツオ。

 

女性であることを強いられてきたテツオには絶対に考えられないことでしょう。

 

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「女って、【生き】苦しい。」

 

出産願望、男性に辱められる恐怖、男性に守ってもらう心地よさ…女装をして天野は女性の生きづらさを実感します。

女装をすることで「女性」の領域に入り込んだのでしょう。

 

女装をすることで、普段は絶対に混じりえないはずの男性と女性、それらの間を行き来する非日常的体験がテツオの性同一性障害への理解に繋がっていくのです。

 

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天野に女装をとくように言うテツオ。そして「これでいい」と断る天野。

「テツオは男の服は着れても女の体を脱ぐことはできない。」

「今はまだ、君の前で男に戻りたくない……!」

 

あえて天野が女装することを選んだのは、テツオに対して欲情する気持ちを正当化したかったのではないかな…と思います。決して女になりたいのではなく。

 

テツオが男性の心を持っていることは十分わかっていても、女性として見てしまう。例えばテツオの胸を見て欲情したりとか…

 

現実でも、性同一性障害の人の本来の性別の名残を探してしまう人は多いと思います。

 

性同一性障害の方からしたら、そういう目線が辛いかもしれませんね。頼むから自分を男(または女)として認めてくれよ、と。手術してもまだ自分を男(女)として見るのか、と。

 

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できれば天野だって純粋な友達になりたいんです。欲情なんてしたくない。女として見られることにずっとテツオは苦しんできたことをわかっているから。

 

天野はテツオの美しさには惹かれて、テツオにとってかけがえのない存在になりたいのです。

 

だからこそ天野はテツオに女性性を見出そうとする自分をごまかしたかったのでしょう。女性のフリをしていれば男性であるテツオに欲情しても不自然じゃない。

 

天野はテツオに対してとても誠実だと思いました。

 

正しい性、マトモな人間は存在するのか  

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この漫画では唯一性的マジョリティーである沙都子さん。彼女は心も身体も女の子で、恋愛対象も男性。

ですが性に対してちょっと潔癖です。

  

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「まともなのは私だけじゃない!!」

 

周りの人が次々とセクマイであることが発覚し、混乱する沙都子さん。

 

そう、この漫画のキャラクターはほとんどがセクマイで“マトモ”なのは沙都子さんと天野ぐらいです。

 

テツオをはじめとするセクマイの人々はそのような目にいつも苦しめられ、また自分が異常であるという孤独と不安を持って生きてきた。

 

しかし、周りが性的倒錯者だらけでストレートが周りにほとんどいないこの状況。この場に限って少数派なのはむしろ沙都子さんの方なのです。

 

何が正しいか、何が異常かなんてその場の状況で一転する。女装や男装など、何か小さなキッカケでジェンダーは揺らぐ。

 

多数派であることは常に正義ではないし、性別だって曖昧な概念です。それを軽蔑する権利は誰にもない。

  

ラストのキスシーン 

盛大なネタバレなのですが、ラストでは天野とテツオがキスします。

このシーンがとっても素敵なんですよ!

  

キスシーンのとき、天野は女装をしているのですが…

天野は女性としてテツオと結ばれたのはあの一瞬だけです。

 

基本的に二人の間には友情しかありません。

 

しかし女装をすることによって、あのときの天野は間違いなく女性だったのです。

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思わずテツオが本音をポツリ。

 

天野がもし女性だったら普通に男女の関係になれたでしょう。

 

でも男同士の友情は作れなかったと思います。

  

テツオはあまりにも美人なため、近づいてくる男性のほとんどがテツオを女性として、恋愛対象としてみていました。

テツオにはそれが辛かった。

 

テツオとしては、たとえどんなに美しい顔であっても、魅力的なスタイルだったとしても、男性としてみてくれる男友達…純粋な友情を求めていました。

それをようやく築けたのが天野。

 

心と身体がちぐはぐだからこそ今のテツオがいる…完璧な男性にはなれないテツオに天野は惹かれていました。

 

ときに欲情してしまったときもあったけれど、天野は精一杯テツオの苦しみを理解しようとしていたし、女装をすることでテツオを男性としてみようとしていました。

 

二人の仲にあるのはかけがえのない友情であり、愛情でもある。

 

キスをしたこの瞬間、天野とテツオは間違いなく男女の関係だったと思います。

 

けれど男女だったのはこの一瞬だけ。

なんて儚い…

 

以上!!

 

私は小説も漫画も大好きなんですが…

初めてその作品を読むときはすごくワクワクするけど、読み終わったら二度とあのワクワクを感じることはできない…

 

そう思うと漫画や小説って一回しか楽しめないモノのように感じて、どうしても購入をしぶってしまうんですよね。寂しく感じて。

 

ですが『幽麗塔』は何度読んでも胸が熱くなります!

読めば読むほど「あぁこのシーン、コイツこういうこと企んでいたんだな…」と、話の辻褄が合い、新たな発見があってとても楽しい。

 

特にラストのテツオと太一のキスシーンは何度も読み返してしまいます。

買ってよかったと思える素晴らしい作品です!

 

皆さんもぜひ読んでみてください〜

 

 

 

 

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