ドルオタちょあよ

ドルオタ美大生のちょあちょあ日記

宮崎夏次系「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」の感想

 

 

 

あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします。

 

さて、今日はブックオフでマンガを買ってきました〜

 

 

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「夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない」

宮崎夏次系という方の作品です。

 

短編漫画集なのですが、今回は特に私が気に入っているお話を紹介します!

 

(ネタバレ注意)

 

 

「僕はおとーさんが変になってよかった」

 

第3話「リビングで」

 

ある日、夫が急に犬になりきるようになった。犬のようにペットハウスに入り、犬のように吠える。

 

「原因はなんだろうね ママ心当たりないの」と息子のジロ。

 

これでは仕事にならないので、夫の職場に電話をかけると、なんと夫は仕事をクビにされていた…

 

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お父さんがある日突然、犬になりきるという設定はなかなかクレイジーです。しかし話そのものは非常にシンプル。

 

ストレスのせいでおかしくなったお父さん、お父さんの異常を見て見ぬフリするお母さん、そして両親に違和感を持つ息子。

 

お母さんはお父さんだけでなく、息子のジロとも向かい合っていません。

 

「ジロあんたケイドロは」

「僕みたいな嫌われ者がまじれるわけないよ 知らなかった?」 

 

サラッと言ってますが、自分が嫌われ者だって家族に言うの、辛い…

 

ジロは家族と向き合おうとしないお母さんのことを、チクチク責めるような発言が多いです。

 

しびれを切らしたジロとお母さんが感情を爆発させるシーンは、ポップな絵柄なのに真剣に目を見張ってしまいました。

 

お父さんはストレスで大丈夫じゃないと薄々気づいていながらも、ずっと見ぬふりをしていたお母さん。家庭が静かに歪んでいくのを認めずにいたら、ついにお父さんがパンクしてしまった。

 

最後のジロの一言にはきっと、胸が張り裂けそうになるはずです。

 

「僕はおとーさんが変になって良かった」

「前より話しかけやすいし」

 

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会社をクビになるお父さん。友達の輪に入れないジロ。何も言ってくれないお母さん。

 

社会からあぶれることよりも、嬉しい、悲しいの感情が壊れていく家族の方がジロにとってはずっと怖かったのでしょう。 

 

 

「僕はなぜか彼女をふと殴りたくなる」

 

第6話「毎日」

 

僕は毎日近所の神社で水をくみ、その水で毎朝コーヒーを淹れている。時々少しめんどうくさいなと思うが、願かけるみたいに、今日もいい日になるように続けている。

 

しかし、今日のコーヒーはいつもと違った。水が凍っていたため、ただの水道水でコーヒーを淹れたのだ。同居する彼女はそれに気づかず「くみたてのお水はおいしいね」と言った。

 

僕はなぜか彼女をふと殴りたくなる。 

 

ハッキリ言って、この一冊の中では影が薄いお話だと思います。他の話が強烈すぎて。

 

でも、このシーンがとっても印象的だったんです。

 

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この漫画で一番ビビったシーン。ヒェッ…

 

実は高校時代にこのマンガを友達から借りたのですが、このシーンをどうしても読みたくなって買ったんです。

 

毎朝寒かろうが、眠かろうが、キチンとお水をくみ続けた彼氏。彼女のためです。水くみは2人の愛の象徴。

 

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水くみを続けているのは、2人がこれからも続きますようにという願掛けだったんですね。

 

でも彼女はTVに夢中で彼氏の話をよく聞いていない。お水の変化にも気づかない。彼女は悪気なく、彼氏の愛を受け取らなかったんだなと思いました。

 

しかし、彼氏もやられっぱなしではありません。「家の中に大きな虫が入ってきたよ…」とビビる彼女。彼氏は寝たフリ。彼女を助けないことで、彼は心のバランスを保っているのです。

 

大好きだけど、大切だけど、好きな人のことをめちゃくちゃに傷つけてやりたいと思う瞬間ってありますよね。自分のことで傷ついてほしいし、自分のことを雑に扱ったことを反省してほしい。

 

私もよくそのように考えてしまうタチなので、この話は胸がチクチクしました。

 

私も、このお話と似た記事を書いています。 

 

アイロンを顔に押し付けたとき、彼氏は自己嫌悪だったと思います。2人の関係が続くことを祈って毎朝水をくんできたのに。彼女にもムカつくし、真面目に続けてきた自分も悲しいし、なんだかもう、何もかもやるせなくなったからシュウーーー(丸焦げ)

 

人間関係って、愛情を適切に受け取ったり、返したり、求めないとあっという間に崩壊するんですよね。どうやったら上手になるんだろう。

 

私自身、人間関係では(特に恋愛)自分の感情に振り回されることが多くて、なんで私ばっかり好きなの?とか、本当に私のこと好きなの?とか悶々として、一人で勝手に暗くなります。

最終的には好きという感情を無くしたい…とか考えるようになります。重い!

 

あまりに深刻になると、恋愛には自己肯定感が大事!…みたいな、何百回も聞いたようなことしか言わない激薄自己啓発本を鵜呑みにしたり。確かに自己肯定は大事だけど、冷静に考えればわかりますよね?そんなのすぐにはムリだって。

 

今は冷静だからわかるんですけど、倒れそうなほど思いつめているときに、そんな悠長なこと言ってらんないですよね。自己肯定感や自信をつけるというのは、それこそ人生のテーマになるような大きな目標であって、数十年かけて鍛えていくものです。

 

彼にもっと愛されたいです、悩んでます、じゃあ自己肯定感あげましょう!って、「バスケができません、じゃあ運動神経をよくしましょう」って言ってるようなものじゃないですか。

 

でも、そうじゃないでしょう?

フツーはじゃあパスの練習しましょうとか、ドリブルの練習しましょうってなるでしょ?

 

人間関係の悩みでは、自信をつけよう自分を認めようなんて、絶対口にすべきでないと思いますね。もっとやるべきことが他にあるもん。

 

自己肯定感っていうのは、そういう地味な作業をしているうちに、後から付いてくるものであって、最初から求めるものではないと思うんです。

 

 

…話がそれた

私の性格だと、この話をどうしてもこのように解釈してしまうんですが、恋愛の仕方によっては全然違う解釈になるんでしょうか。 

 

ちなみにこの話、他の話よりも釈然としないラストなのも気になる。ヤバい事件が起こっているのに、サラッと終了しちゃうんです。

 

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まるでいつものように…ってことは「アイロン事件」が原因で、前のように2人はうまくいかなくなったってことですよね。さすがに彼女も気づいたと。

 

この2人、結婚しているのか事実婚なのか、はたまた同棲しているカップルなのか…記述されてはいませんが、なんとなく同棲な気がする。2人とも若そうだし。

 

結局別れるんじゃないかなー…

 

でもこの漫画の大きなテーマは「目を背けること」「気づかないフリ」だと私は思っているので、2人の関係が崩れていることに目を背けて、このカップルは関係を続けようとするのでしょうか。

  

   

 

「いつまで居るの?ウチに…」

 

第7話「石鹸」

 

お兄ちゃんはいつもイライラしてる。

嫌なことがあると、一晩中身体を洗っている。おろしたての石鹸が擦り切れてしまうくらい洗うから、肌がカサカサ。

 

そんな迷惑なお兄ちゃんが、三年ぶりに家に帰ってきた…

 

家出をした性格に難アリの兄貴が、急に帰ってくる話。 当然、妹である主人公はお兄ちゃんのことが大嫌いです。 

 

八つ当たりしてくるし、理不尽なことで暴力振るうし、すぐ機嫌を悪くする典型的ダメ人間です。だから両親も兄貴の扱いに困って、ひたすらご機嫌取り。

 

でも兄貴としては庭の雑草を抜いたり、レストランでご馳走したり、妹に欲しいものを買ってあげようとしたりするわけです。家族のために。

 

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家族から遠まわしに「早く帰って」と言われてしまう兄貴。もちろん、兄貴は怒ってお風呂にこもってしまいます。何度も何度も、身体を洗う。まるで自分をばい菌みたいに…

  

この兄貴が家族から厄介者扱いされるのもよくわかります。すぐキレるし、乱暴だし、役に立たない。兄貴がいると迷惑なんです。きっと社会でも友人がいなくて、嫌われ者で、どうしようもなくなったから家に帰ってきたのでしょう。

 

兄貴は石鹸のように気持ちを洗い流したいというよりは、石鹸みたいに自分自身をすり減らしていきたいのではないかと思ってしまいました。

 

でもこのマンガ、兄貴がボロカスに扱われているわけではありません。

 

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妹には兄貴のガラスのハートなんてお見通しなんだなぁ。

妹には、どうか兄貴の弱さを理解していてほしいです。そうすれば、読者である私たちも少しは救われたような気持ちになれます。不器用で、みんなの役に立ちたいし好かれたいけれど、うまくいかない人なんて結構います。

 

この漫画のお話は全部心に刺さるけれど、最後に少しだけ救いがあるから、スルスル読めるんですよね。この漫画の読みやすさは、夏次系先生の絶妙なさじ加減にあると思います。

   

 

私的にはこの3話が好きですが、他のお話もとっても面白いです!

結構独特な作風で驚かれたと思いますが、少しは夏次系ワールドが理解できたのではないでしょうか。

 

   

 

女の子が可愛い

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夏次系先生が描く女の子みんな、目がキラキラで透き通っているんですよ。可愛い。

お水みたいに透き通っていて、ちょっとうるうる、光に反射してて。先ほど紹介した兄妹の話でも、妹がやたらと可愛く描かれているんです。

 

夏次系先生の漫画に出てくる人々は、ナチュラルか極端かで言ったら絶対極端。破壊的、衝動的なキャラが多いです。犬みたいになったり、アイロンで顔丸焦げにしたり、嫌なことがあると一晩中身体を洗ったり…ちょっとおかしな人々が毎回登場します。

 

ここでは紹介していませんが、他にも整形のしすぎで顔が星の形になった人や、夜中に全裸で屋根の上に立つ美少年なんかも登場します。

 

とはいえ、このマンガをただのサブカル漫画かな…と舐めてかかると結構危険です。心がえぐられて、いつまでもいつまでも心に残るような作品ばかりですから。

 

しんどいストーリーですが、それでも私が泣かずに最後まで読み切れたのは、ポップな絵柄と、各ストーリーに救いがあってホッとするからです。夏次系先生の漫画は他にも何冊か持っているのですが、このしんどさと爽やかさ、優しさにハマってしまい、ついつい手に取ってしまいます。

 

 

高校時代を思い出した

 

身のまわりにある物から宇宙の彼方まで 漫画家 宮崎夏次系の正体とは? – BGM[ビージーエム]

 

インタビューなどで、夏次系先生はよく高校時代のお話をされているのですが、実は私も夏次系先生と同じ高校出身です。美術科があることで有名な高校でした。

 

私は学生生活で一番楽しかった時期は?と聞かれたら、迷わず高校!と答えます。ものすごく個性的な高校だったんですよ。部活とか委員会とか生徒会、校則もなかったです。のびのびとした校風が私には合っていたし、きっと夏次系先生もそうだったんだと思います。地方なのに、公立で美術が学べるというのもありがたかったです。

 

インタビューを読んで、夏次系先生って不思議な人だな〜と思ってしまいましたが、そういえばこんな感じの、フワフワしている人が美術科には結構いたような気がします。おっとりしつつも制作には真面目で、外柔内剛な人が多かった気がする。

 

読んでいてなんだか懐かしい気持ちになりました。

 

 

以上!!!

正直、万人にお勧めできる作品ではありません。絵柄といい、じわじわボディーブローが効いてくるようなダークさといい、好みがはっきり分かれる作風なのは確かです。

 

でもつまらなかった!という感想にはなりづらい作品だと思うので、私はめちゃくちゃオススメしたい。自分の気持ちから目を背けてきた人間を淡々と描いた作品だからです。

 

感情は自然物ですから、人の感情をコントロールすることは誰にもできません。傷つきたくなくても人間は傷つくし、ときには泣くことだってあるでしょう。

 

そんな当たり前のことから目を背けて、歪んでしまった人の姿をキュートな絵柄でサッパリと描かれているので、不思議とサクサク読めちゃいます!

 

皆さんもぜひ挑戦してみてください〜

 

 

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